保険でカバーするのは公的補助で足りない部分
結婚、出産、マイホーム購入など、人生で迎えるライフイベントごとにさ まざまな費用がかかってきます。
さらに、病気、事故、災害、死亡など、予測できない事態になってしまう場合にもお金が必要です。
そのようなライフイベントや不測の事態に備えるため に、日頃から貯蓄をしたり、保険に入っておいたりして対処できるように準備しておくのです。
自分で備える貯蓄や保険とは別に、私たちが払っている税金や社会保険料を財源にした公的な補助金・助成金や社会保障の制度があります。
『2018年版届け出だけでもらえるお金の本』(PHP研究所)などの著書があるファイナンシャル・プランナーの井戸美枝さんは、「社会保険は、病気、事故、家族の死亡などでこれまで進んでいたステージから外れたときに元に戻す役割があります。でも、社会保険だけだと完璧に元に戻ることが難しいから、社会保険にプラスして民間保険に加入していれば、元に戻りやすくな ると思います」といいます。
保険に加入したり、貯蓄で備えたりする場合は、かかるお金から公的補助で出る分を除いた額を準備すればいいことになります。
ここでは、平均的なかかるお金のデータと公的補助の額を見てみましょう。
結婚費用:ご祝儀の分を引くと自己負担額はもう少しダウン
かかるお金の目安:354.8万円
※ゼクシィ「結婚トレンド調査 2017] 調べ。
上の金額は、「挙式、披露宴・披露パーティーの総額」で全国平均。
ご祝儀総額は全国(推計値)で230.7万円。
自分たちで出す、および親に出してもらう自己負担額は、約125 万円程度になると予測できます。
公的補助の例
20万円
※群馬県上野村の「結婚祝金」の場合。10年以上 定住することなどが条件。
過疎化が進む地域では、若い人の定住を促すために「結婚祝い金」を出している自治体があります。新婚世帯への住居費の補助を実施している地域もあります。また、会社から「結婚祝い金」が支給されることも。
出産費用:出産場所や地域によってばらつきがある!
かかるお金の目安:42.4万円
※厚生労働科学研究費補助金・厚生労働科学特別 |研究事業「我が国における分娩にかかる費用等の実態調査」(2009年実施)より。
「上の金額は、分娩・入院費用として出産施設に払う金額の全国平均。最小値は21.8万円、最大値は81.0万円。分娩する地域や施 設によっても差があります。豪華な個室でフランス料理つきの産院などは高額に。
公的補助の例
42万円
※健康保険から出る「出産育児一時金」の額。
「出産育児一時金は、直接支払制度を利用すると立て替えずにすみます。
働いている女 「性が産休を取って出産する場合は、「出産手当金」が受け取れます。
自治体では、出産前の妊婦健診費用助成も行なっています。
教育費:公立か私立かで 金額が大きく変わる!?
かかるお金の目安:1人786万~2316万円
※文部科学省「平成26年度子供の学習費調査」、日本学生支援機構「平成26年度学生生活調査」より。
幼稚園から大学まで子ども1人当たりにかかる教育費の額。
すべて公立の場合は約786 万円、すべて私立の場合は約2316万円となりました。
その差は1530万円。
進路によって、かかるお金は大きく違います。
公的補助の例
最大210万円
※0~3歳未満で月額1万5000円、3歳~中学卒業まで1万円もらえる場合の児童手当の最大金額。
これ以外にも、私立幼稚園の就園奨励補助金、経済的に就学困難な場合に通学費や学校給食費などが支給される就学援助、高校では公立の授業料分の補助となる「高等学校就学支援金」も受けられます。
医療費:公的健康保険で自己負担は軽くなるかかるお金の目安
67万円(入院した場合)
※生命保険文化センター「平成25年度生活保障に関する調査、厚生労働省「平成26年患者調査」より。
入院した場合の1日当たりの医療費(自己負担額)は21万円かかり、退院患者の平均在 院日数は31.9日となっているので、これをかけると約67万円かかることになります。
公的補助の例
「1カ月の医療費から約9万円を引いた額」
※70歳未満の「所得区分ウ」(標準報酬月額28万 ~50万円)の場合の高額療養費制度。
高額療養費制度は、年齢と所得区分で自己負担限度額が異なります。
健康保険加入によって、医療費の窓口負担は3割(小学校入学~69歳の場合)になります。
自治体ごとに実施している乳幼児医療費助成制度も。
介護費:介護を受ける場所でも かかり方が変わる
かかるお金の目安:546.1万円(平均介護期間の額)
※生命保険文化センター「平成27年度生命保険に関する全国実態調査」より。
月々は7.9万円で平均介護期間が4年11カ月なので、一時的にかかる介護費用80万円と合わせて、介護費用の合計額は546.1万円になります。介護期間が10年になると1028万円に。
公的補助の例
32万4585円(月額)
還公的介護保険で要介護度5に認定された場合の支給限度額36万650円(月額)から1割負担の3万 6065円を引いた額。 「公的介護保険は、介護度の認定を受けて利用します。介護度によって支給限度額が違い、そのうち自己負担は1~2割(2018年から3割)。限度額を超えて介護サービスを利用する場合は全額自己負担となります。
老後費用:公的年金で足りない部分をどうする!?
かかるお金の目安:3000万円
※総務省「家計調査 2016年」より。高齢夫婦無職世帯の不足金額を月5.5万円として計算。
毎月の不足分を5.5万円、65~90歳までの25年を老後として計算すると、1650万円。 1人分の介護費を550万円として、2人分で1100万円。250万円を予備費と考えて、自分で準備する老後費用の目安は、約3000万円。
公的補助の例
6371万円
※厚生労働省年金局「平成27年度厚生年金保険・ 国民年金事業の概況』より。
老齢年金の受給権を持つ人の平均年金月額は、国民年金5万5244円、厚生年金14万 「7872円。夫婦期の年金月額20万3116円を20年、妻だけの時期は月額12万4715円(※) を10年とすると、6371万円に。
※妻だけの時期は、夫の遺族年金6万9471円と妻の国民年金 5万5244円で計算。夫の厚生年金額14万7872円から国民年金分の5万5244円を引き、残った部分の3/4を遺族厚生年金の額と仮定した。