対人賠償保険～自動車保険の基礎知識～

対人賠償保険とは

自動車保険は一般的に複数の補償がセットになっています。

基本的な補償として対人賠償保険と対物賠償保険があり、どちらも相手方に対する補償となります。

このうち対人賠償保険とは人に対する補償であり、物に対する補償は対物賠償保険で支払われます。

自動車を運転中に他人にケガを負わせたり死亡させてしまった場合は、多額の損害賠償金が発生します。

死亡事故だけでなく相手に後遺障害を与えてしまったときも数億円という単位の賠償責任が発生するため、個人が支払うことは到底不可能でしょう。

このようなリスクに備えるためにも対人賠償保険に加入しておかなくてはなりません。

他には、自分若しくは自分の車に乗っていた搭乗者などを補償する保険として、人身傷害保険・搭乗者傷害保険・無保険車傷害保険・自損事故保険などがあります。

自分の車の補償としては、車両保険があります。

補償の対象	人(治療費等)	物(賠償や補償)
相手への賠償	対人賠償保険 (相手にケガをさせた)	対物賠償保険 (相手の車を壊した)
自分への賠償	人身傷害保険 搭乗者傷害保険 無保険車傷害保険 自損事故保険	車両保険

対人賠償保険は無制限が基本

対人賠償保険の補償額は保険商品によって設定が異なります。

無制限のみで引き受けている商品もありますし、補償額が選択できる商品もあります。

ただ数億円という賠償のリスクを考えると補償額を設定せずに無制限でかけておいた方が安心です。

交通事故高額賠償判決事例（人身事故）

認定損害額	態様	裁判所	事件番号	判決年月日	事故年月日	被害者
						性別・年齢	職業
5億2,853万円	死亡	横浜地裁	平成22年(ﾜ) 第6587号	H23.11.1	H21.12.27	男・41歳	眼科・開業医
4億5,381万円	後遺	札幌地裁	平成27年(ﾜ) 第558号	H28.3.30	H21.1.7	男・30歳	公務員
4億3,961万円	後遺	鹿児島地裁	平成27年(ﾜ) 第368号	H28.12.6	H22.11.9	女・58歳	専門学校・教諭
3億9,725万円	後遺	横浜地裁	平成18年(ﾜ) 第4571号	H23.12.27	H15.9.14	男・21歳	大学生
3億9,510万円	後遺	名古屋地裁	平成21年(ﾜ) 第76号	H17.5.17	H19.4.13	男・20歳	大学生

※損害保険料率算出機構　2017年度自動車保険の概況より

自動車保険を販売している保険会社の方でも無制限をすすめているので、十分考慮したうえで決定しましょう。

自賠責保険だけでは不十分

自動車保険には自賠責保険と任意保険の二種類があります。

自賠責保険は必ず加入しなければならない強制保険となっており、自動車保険はあくまでも加入者の任意となります。

自賠責保険に加入していれば任意保険は必要ないのではと思ってしまう方もいるかもしれませんが、自賠責保険の対人賠償保険には上限があります。

相手を死亡させてしまったときの補償は最高でも３０００万円までとなっており、重度後遺障害の場合（被害者1名あたり）４０００万円、傷害による損害の場合は最高でも１２０万円まで、死亡するまでの傷害による損害も最高で１２０万円と決して十分な補償額とは言えません。

この補償額を越えた部分を任意の自動車保険で賠償するので必ず加入しておきましょう。

対人賠償保険の適用範囲の注意点

対人賠償保険の支払い対象は、あくまで「相手」です。

ここでいう「相手」の定義とは、「被保険者（保険の対象となる人）」以外の人のことで、「被保険者」は対人賠償の対象にはなりません。

さらに被保険者の配偶者や子は保険支払の対象外になることがあるので気をつけてください。

こういった場合は、人身傷害保険や搭乗者傷害保険などでカバーしていくことで対応していくことが可能です。